FreeBSD による PPP 接続方法

本稿では、FreeBSD と PPP に関する簡単な基礎知識と、 FreeBSD による 姫路工大アクセスサーバ への PPP 接続に関する設定方法等について紹介する。
【1. FreeBSD とは何か?】

``FreeBSD'' とは、米国カリフォルニア大学バークレー分校 (UCB: University of California at Berkeley)の CSRG により 開発されたUNIX ``4.4BSD-Lite'' を基にした、 Intel 386 アーキテクチャベースの 32-bit Operating System である。 どの様な目的にも制限無く使用出来るソフトウェアを提供することを目指して、 有志による ``FreeBSD プロジェクト'' によって開発されている。 この OS の最大の特徴は、無料でありかつソースコードが公開されていることである。 1997年1月末日時点での最新バージョンは、 公開版としては 2.1.6.1Rで、 入手方法としては、Internet 上の anonymous FTP サイト、もしくは Walnut Creek の CD-ROM などがある が、詳しくは国内のJapan FreeBSD User's Groupによる http://www.jp.FreeBSD.org/ や、NetNewsの comp.unix.bsd.freebsd.*, fj.os.bsd.freebsd などを参照されたい。

Walnut Creek の CD-ROM
[写真1] Walnut Creek の CD-ROM

FreeBSD は、基本的にAT 互換機 の動作を前提に開発が進められている。 ISA / EISA / VL-Bus / PCI-Bus の PC・ i386 SX から Pentium Pro までの CPU (Central Processing Unit)・ RAM (Random Access Memory) 4Mbyte 以上 (X Window System を使うには、16MByte 以上は欲しい)・ 最小構成で 25Mbyte 程度のディスク容量 (色々なアプリケーションを入れて通常の構成、 また仕事に使う領域などを考えると、最低でも 500Mbyte 程度は欲しい) があれば使用出来る

この他にも、AT 互換機に利用出来るフリーの UNIX(like)-OS として、 NetBSD・OpenBSD・Linux 等がある System V 系統の Linux は、 基本的にカーネルのみの配布であり、 これをベースにして Slackware や RedHat などの配布パッケージが製作されている。 これに対し FreeBSD では、カーネルをはじめとしてシステム全てと、 個々のアプリケーションを含んだ形で配布されている。 当初、FreeBSD には簡易なインストーラがなく、 サポートするハードウェアも少なかった為に、 Linux に比べて敬遠された向きもあるが、 現在ではメニュー形式の日本語インストーラも用意されている。 現状では、サポートするハードウェア・フリーソフトの移植/導入・ 日本語環境の構築等、 どちらでもそう大差はないと言える。

AT 互換機の現状は、価格・性能ともに過当競争であり、 高性能の新機種が次々に発売されている。 FreeBSD に限らず、OS 上でビデオカード・SCSI (Small Computer System Interface) カード・マウス…など種々のデバイスを使用するに当たっては、 そのデバイスを制御するソフトウェアである``デバイスドライバ'' が必要である。 しかしこのような現状では、種々のデバイスに対する「ドライバ」の 開発は、なかなかハードウェアに追い付かない。 特に新製品等に対しては、 商用 OS ではサポートが期待出来る とは言うものの、 特に非商用 OS では「いつか誰かが」ドライバを 開発せねばそのデバイスは使用出来ない。 従って実際に使用する場合、最新のハードウェアを揃えても、 ドライバがないためにそのOSでは利用出来ないこともあるので、 事前に充分、書籍・雑誌・NetNews・ WWW (World Wide Web) 等々で情報を収集しておくことが必須であろう。

とはいえ、FreeBSD はフリーの OS であり、かつ Windows95 等に比べて「軽い」ので Pentium でなく 486DX クラスの CPU でも充分に使用出来るという点や、 仕事等で日頃 UNIX を使用している人にとっては 同じ『環境』を構築出来るという点など、 大きな利点があるだろう。


《用語説明》
姫路工大アクセスサーバ
利用条件等に関しては、センター広報同号の記事を参照 もしくはセンターまで問い合わせのこと。
CSRG
Computer Systems Research Group。既に解散してしまった。
UNIX ``4.4BSD-Lite''
UNIX: Uniplexed Information and Computing System,
BSD: Berkeley Software Distribution の略。
2.1.6.1R
1996年11月リリース。 末尾の ``R'' は Release の意味。 この他にテスト版である 2.2-BETA や 3.0-970124-SNAP がある (1997年1月末現在)。
国内の Japan FreeBSD User's Group
尚、本家は http://www.FreeBSD.org/ 。 ちなみに http = HyperText Transfer Protocol である。
Walnut Creek の CD-ROM
雑誌等の付録 CD-ROM に収録されているものは、 ファイル等が完全に揃っていないこともあるので、避けた方が無難である。
AT 互換機
元来は、1984年8月に発売された IBM 社の 80286 ベースパソコンである PC/AT (Personal Computer / Advanced Technology)シリーズの互換機という意味。 決して Absolute Terror の略ではない:-p。
前提に
NEC PC9801 シリーズ用として FreeBSD(98) も開発されている。
ISA / EISA / VL-Bus / PCI-Bus
  • ISA: Industry Standard Architecture
  • EISA: Extended-ISA
  • VL-Bus: Video Electronics Standards Association LocalBus
  • PCI-Bus: Peripheral Component Interconnect-Bus
  • 使用出来る
    1つの HDD に FreeBSD と他の OS (例えば Windows95)を入れ、 立ち上げ時に起動選択する…ということも可能である。
    NetBSD・OpenBSD・Linux
    これらはマルチプラットホームで、amiga・sparc・mvme68k等、i386 以外でも 動く。この他、商用のものとしては、BSD/OS, PANIX, Solaris x86などがある。
    Linux
    『りぬくす』と読む(のが一般的)。 1991年にフィンランドの Linus B.Torvalds 氏を中心として産まれた OS。
    カーネルをはじめとしてシステム全てと、 個々のアプリケーションを含んだ形
    port (=FreeBSDへのパッチ) + package (=既にコンパイル済みのバイナリ群) という形で用意されている。
    大差はない
    FreeBSD と Linux のどちらがいいか? …それはある種 ``宗教戦争'' の様なものである(苦笑)。
    サポートが期待出来る
    最近の AT 互換機用のデバイスは、購入時に Windows95 用のドライバソフトが添付されているのが一般的である。
    フリーの OS
    無償。逆に言えば、``at your own risk'' でもある。
    同じ『環境』を構築出来る
    X Window System の環境など。例えば、 X11R6 + mule + Wnn + TeX + xdvi での文章作成など。

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    → フレーム機能対応版 → Internet関連業績(笑)


    by はやし はるひさ hayashi あっとまーく laic.u-hyogo.学術.日本